2012年05月01日

「患者会議」の新しい取り組み

2年近く前から「デジタルヘルス」のテーマについて会社として本格的に勉強し始めました。
私は理系ではありませんので、新規の医療技術の側面より、ソーシャルメディア、患者用アプリなどコンシューマー側のツールの発展について注目してきました。糖尿病、アレルギー、喘息、不妊、アルツハイマー、てんかんなど、それぞれの疾患における患者や介護者のtweetやブログ記事を読んだり、分析したりし、大変さと悩み事をある程度把握してきたつもりです。同時に母国のアメリカとヨーロッパ(大学の第二外国語はドイツ語でしたが、役に立ちました!)の状況を見ながら、日本との違いも実感しました。

そこで、何か自分が貢献できることはないかと考え、今回、新しい取り組みをスタートすることにしました。
「患者会議」という名前で、疾患別、テーマ別のディスカッションを促進できる「場」を用意しようというアイデアです。その「場」の形がいろいろな可能性をもつ、「アナログ」(=フェースtoフェース)、「デジタル」(=オンラインにてメール、チャット、SNS,ビデオ)及びハイブリッド(=両方のごちゃ混ぜ)タイプも視野にいれます。
参加する人は一般の患者・ご家族・友達、ドクター・ナース・薬剤師、または場合によっては製薬・医療機器・診断機器のメーカー企業側の担当者もありえます。

患者側から、病気のこと、生活の障害になっていること、知りたいこと、病気との接し方や対策に関する相互のアドバイス。
医療関係者から、日常生活の改善点、病気についての分かりやすい説明、専門的な立場から見た一般的なサポート。
メーカーから最新の国内・外の研究発表情報、生活支援のアプリ、疾患情報(日本の法令上、直接に製品を患者に販売できませんので、売り込みのない場であること!)。
当社からは、さまざまな疾患に関するトレンド情報、アメリカやヨーロッパのパワーブロガーの手法、患者や一般市民のヘルスケア関連のイベント情報なども提供したいと考えています。

ご興味のある方、是非ご連絡を下さい。この記事についてコメントを書いていただいても構いませんし、(自分のコメントを公開しないでほしいのであればその通りに書いてね)、kanjakaigi@3rockconsulting.com あてにメールを送ってくださってもOKです。これからやることですので皆さまの意見を聞きながら構築したいと思います。だれでもお世話になっている日本のヘルスケアシステムが破綻しないように、より患者側の視点に注目しながら、貢献していきたいです。よろしくお願いします。



jeffjapan at 12:26コメント(0)トラックバック(0)IdeasPharma/Healthcare 

2012年01月13日

患者の服薬行動:Doctor is Big Brother?


proteus
村上春樹さんの「1Q84」三作目も大変売れているようです。アメリカ人である私はこの本の元となったジョージ・オーウェルの1984をすぐに連想しました。それは恐らく最近のファーマ業界の新しいトレンドが、かの本に登場する「Big Brother」を思い起こさせると常日ごろから感じていたからかもしれません。「Big Brother」は直訳すると「偉大な兄弟」ですが、この小説の登場以降、欧米では「独裁者」「監視する人」という意味となりました。完全統制された近未来社会が舞台の小説で、主人公の言動を隅から隅まですべて監視する「Big Brother」の存在に、読者は大きな恐怖を覚えずにはいられませんでした。

 

前回の記事で、薬の容器の電子キャップが開く回数で何となく患者の服薬をトラッキングするシステムを紹介しましたが、監視という役割においてはBig Brotherはそんな可愛いらしいものではありません。比較するなら、こちらのシステムはBaby Brother、生まれたての赤ちゃん程度。

 

次に紹介したいのは、Little Brother(小さい弟)ともいえる電子薬剤容器。服用している薬をこの容器のトレーに入れてふたを閉め、電源を入れます。すると服薬の時間に無線送信機でお知らせが来るのです。ふたがオレンジ色に光り、そこから1時間が過ぎると5分おきに警告音が鳴り始めます。そのままにしておくと、患者が登録した電話やメールアカウント宛に注意を促すテキスト・メッセージが送られ、ささにそのまま放っておくと、介護士やご家族の方に電子メールが届くという仕組みです。こうなってくるとややうるさいですが、それでもまだ可愛いものかもしれません。
最後に紹介する真のBig Brother(恐ろしい兄さん)は、なんと錠剤そのものに付着させる極小のコンピュータ・チップ。このチップは食品とビタミン類から作られているので飲み込むことができ、患者の体内から薬の効果や服用状況をモニタリングします。胃酸の作用で活性化し、体温や心拍数、覚せい状態や体の角度など重要なシグナルを外部モニター(皮膚に張ったパッチ)に送ります。外部モニターを経由したデータはオンラインデータベースや携帯電話に送信され、これらのデータを見れば、服薬状況や薬の効果、副作用を一目瞭然で把握することができるのです。

 

ノバルティスファーマ社が最近、移植や循環器などの疾患領域で上記コンピュータ・チップによる服用管理システムを利用する契約を開発会社プロテゥス・バイオメディカルと約25億円で結んだそうです。発表によると、海外での少数でのトライアルではディオバン服用患者のコンプライアンス率が6ヶ月で30% から 80% に向上したそうです。臨床試験は既に始まっており、2011年後半の発売を目指しているということです。確実に患者さんに貢献するシステムだと思いますが、想像するとなんだかちょっと怖くないでしょうか?

 

Big Brother, can you hear me? (偉大な兄弟よ、聞いてるかい?)



jeffjapan at 13:00コメント(0)トラックバック(0)Pharma/HealthcareMarketing 

2011年12月16日

患者の服薬行動:やはりアメリカ人はいい加減

adherence curves

例えば、ある患者像を考えて下さい。
42歳の男性、既婚で子供一人。周3-4回のペースでフィトネスクラブに通いウエートトレーニングをする元スポーツマン。健康そうであり、自覚症状は何もない。が、家族の病歴はかなり大変で、あらゆるCV疾患、糖尿病、甲状腺問題などが盛り沢山である。BMI26前後、ウエスト86cmの準メタボ予備軍。食生活は悪くないが、肉とビールが好きで、時に我慢できなくなる傾向が強いので、気をつけないとゆくゆくリスクが高そうだ。予防対策としてサプリメントを飲んでいる。この人に薬が処方されたら、きちんと服薬できるのだろうか。Let’s check!

 

上の図は、横軸がカレンダー、縦軸が時間で、この患者が容器から薬を出したポイントが青い点で示されているもので、一ヶ月間の服薬状況が見事に表されています。処方をもらった当日( 砲量襪鵬箸傍△辰峠蕕瓩凸瑤魄んでいますが、どうもこのとき2回容器を開けたようです。翌日朝早く家を出るので予め薬を出しておいたのかもしれません。でもその後、薬を鞄に入れることを忘れたようで、5日間のブランクが生じました(◆法その後はしばらく前朝しっかり飲んでいましたが、やはりちょこちょこ忘れたりして、それからまた別の出張かな()。その後もパターンはマチマチで、結局この一ヶ月のコンプライアンス率は54%でした。

 

しかし諦めるのはまだ早い!何かリマインダーが出されたとしたら、患者の行動は変わるのでしょうか? この場合、あるツールの使い方について改めて説明を受けた後、この患者の行動は下の図のように変わりました。

 

横軸下部の黒く塗られている部分が週末の表示なので、どうも水曜日と金曜日にまだ何か問題がありそうですが、全体的に一定の時間帯に毎日のように服薬できるようになり、コンプライアンス率は84%に上昇しました。Good!

 

もう既に想像している方もいるかと思いますが、この患者は私です。「日本人よりも日本的だ」とたまに言われることもありますが、私のようないい加減なアメリカ人でも、しっかりと指導を受ければそれなりにできるんですよ!

 

上記のようなツールはMedication Event Monitoringと呼ばれています。数か月前にヨーロッパに行く機会があり、この分野で活躍しているある会社を訪問しました。そこで作られているシステムを持って帰り、今上記のように勉強している段階です。種明かしをすると、薬のボトルキャップのなかにセンサーがあり、そのビンを開く度にセンサーが起動して記録をトラッキングしていきます。定期的にそのデジタルキャップをコンピュータにつなげれば、データ通信によりWeb上で上記のようなアウトプットが見える仕組みまで完成させています。

 

海外での主な応用場面は臨床試験だそうです。効能に影響を与えるようなことがあれば、質の悪い症例パターンとそうでないパターンをしっかりと把握して分析することができます。ここ数年間は、医療介入プログラムでも利用されることが多くなってきています。マーケターの視点で面白いと思うのは、たとえば上市後の薬剤であれば医者や薬剤師にこのようなツールを用意して患者さんに渡してもらい、定期的に結果を一緒にディスカッションするようなプログラムを作ります。可視化された材料があれば治療や服薬指導がやりやすくなり、患者さんの相談の頻度も上がるでしょう。製薬企業もWIN患者さんもWIN医療機関もWIN。しっかりとしたケアができ、アウトカムがよくなるはずだから、国だってWINになるはずWINWINの倍ですよ!面白い話だと確信しています。

 

このシステムはまだ完ぺきではないですが、特筆すべきは患者にフォーカスしていることと、「一回掴んだ顧客をしっかりとフォローする」という他業界での常識を、製薬マーケターも持てるような時代になったこと。まだまだ手探り状態ではありますが、当社ではこのよう新しい取り組みにトライする企業を一緒に応援したいと思っています。ご意見をお待ちしています!


上記の記事のオリジナルはミクスオンラインに2010年3月17日に投稿しました。

http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38743/Default.aspx



jeffjapan at 12:30コメント(0)トラックバック(0)MarketingPharma/Healthcare 
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