2011年10月

2011年10月28日

患者の服薬行動の把握

新しい「市場の隙間」を探している製薬マーケターが多いようです。長期収載品目は薬価改定に直面しており、プライマリーケアの主な領域では配合剤などの導入で伸び悩んでいる製品も少なくありません。そのため、新たな成長機会を探し、患者フローの上流でのDTCプログラムの実施を考えているブランドマネジャーが増えてきていると感じます。テレビや紙媒体を通じて一般市民に疾患を啓蒙し、受診率をあげようという狙いです。しかしこれには今までのプロモーション活動とは桁違いの膨大なお金が必要で、かつ未知の世界でもあります。では、どうするべきなのでしょうか。

 

 私は最近、患者フローの反対側のエリア、下流にフォーカスした勉強をしています。一人の患者が、医者から初めて薬の処方箋をもらった以降の話です。その患者は、病院を出た直後どういった行動をとるでしょうか?「日本人は医者に言われた通りに実行しますよ」とよく言われますが、私の周りの日本人には結構わがままな人が多いのか、いつも「あ、そうだよね」と言いながら、結局その意見の通りに行動しないことが多いのです。本音の部分では、個性的といわれるアメリカ人とそんなに違わないのでは・・・という前提のもと、今日はこの路線でそのまま話を続けます。

 

 さて、その患者さんが真面目に門前薬局へ行って薬をもらったとします。ではその次の患者行動はどうでしょう?ここに至ってはかなり不明なのではないでしょうか。言葉は悪いですが、一般用語で言えば「せっかくつかんだ」顧客が、当社の製品に対しどんな思いをもち、どんな使い方をしてどこまで満足しているかを、きちんと把握しているブランドマネジャーは非常に少ないのです。「当製品の服薬率は65%」とほとんどの製品担当者は言いますが、この数値に明確な根拠はないケースが多いです。

 

 この「服薬」の状況をより明確に理解できるサポート・ツールが最近、少しづつ出てきています。まだ完ぺきではありませんが、状況把握に役立つシステムなどです。一つ目は日本国内の調剤薬局データをベースにした調査会社。東京大学発のベンチャーとしてスタートした株式会社医療情報総合研究所が提供する分析サービスがあります。従来からの卸の出荷ベースや市場シェアのマクロ数値と違って、患者さん一人一人の積み重ねを集計しているので、特定の患者行動を時間軸でフォローできるのです。従って「服薬(アドヒアランス)」にどういった問題があるのか、ある程度見極めることができます。例えば脱落の危険性の一番高いタイミングはいつで、平均処方期間は何日間、併用している薬は何なのかなど、非常に面白いデータが見えてくることもあります。適応症の中のアップグレード、切り替え、ジェネリック導入、診療科別などのデータもあるようです。もし競合他社がこういった情報を手に入れているとしたら、脅威です。


この記事のオリジナルは2010年2月17日にミクスオンラインへ投稿しました。
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38592/Default.aspx



jeffjapan at 15:00コメント(0)トラックバック(0)Pharma/HealthcareMarketing 
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